トイレの「場」を覗いてみると、実は異業種が関係し合い、非常に多面的で奥が深いトコロなのである
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トイレの「場」を覗いてみると、実は異業種が関係し合い、非常に多面的で奥が深いトコロなのである
トイレのことは、なんとなく話題にしにくいと思っている人が多いのではないだろうか。しかし、当たり前だが、トイレには誰もが毎日お世話になる。そしてトイレの「場」を覗いてみると、実は異業種が関係し合い、非常に多面的で奥が深いトコロなのである。
記念すべきToilet第1号記事では、日本の「スゴイ」トイレを紹介したい。国内外のトイレの研究をしてきた私が「スゴイ」と感じているトイレの一つは、日本の高速道路のサービスエリアやパーキングエリア(SA・PA)のトイレである。私が子供の頃の記憶では、SA・PAのトイレは「仕方なく使うところ」だった。それが、最近では、それぞれのSA・PAのトイレに個性や工夫が見られ、デザイン性が高く、清潔な空間となっている。この変化のきっかけは2005年の日本道路公団の民営化だったようだ。たとえば民営化後のNEXCO中日本では、トイレ整備を通じて利用者を「おもてなし」しようと委員会を発足させた。日本平PAのトイレの改修を皮切りに、混雑しないトイレ、交流の場となるようなトイレが各地で新設あるいはリニューアルオープンされている。
しかし、トイレは施設(ハード面)だけが素敵でも、その維持管理や清掃が伴わなければ魅力を失うことは、容易に想像がつくだろう。家のトイレだって、数日掃除しなければ不潔になる。ましてや大勢の利用客がいるSA・PAのトイレとなれば、なおさらである。トイレのキレイ(K)、清潔(S)、臭わない(N)を目指して、KSN戦略と銘打って徹底したトイレ清掃を最初に展開しはじめたのは、中日本ハイウェイ・メンテナンス中央株式会社(メンテ中央)というNEXCO中日本のグループ会社であったそうだ。清掃スタッフをエリアキャストと呼び、科学と技で個室トイレであれば3分でピカピカにする。手鏡を使ってトイレの内側まできれいになっているか確認するという。
徹底したトイレ清掃は、今や全国のSA・PAに広まっている。こうしたプロの清掃技術を地域貢献に活かそうと、メンテ中央では、PAに近い小学校でトイレ清掃を指導する活動も実施したという。小学生が、キレイにすることの喜びを体験して、日々のトイレ清掃に誇りを持ってもらうことを目的とした活動である。
日本は、いまや衛生大国と言われる。外国人観光客の多くが、日本のトイレに驚くという。そうしたトイレが成立しているのは、施設・設備(ハード面)、維持管理や清掃(ソフト面)、そして誇りを持って取り組む人の存在があってこそであろうと、高速道路のSA・PAのトイレのスゴサを感じながら、改めて思う。
2022.02.02 UP