大人だからこそ。生きていく上で、しっかり知っておきたい性教育のこと。

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大人だからこそ。生きていく上で、しっかり知っておきたい性教育のこと。

「人間関係と性」社会人が性教育を学ぶ意義とメリット

近年、包括的性教育を広めようと、メディアでは月経や子供の性教育などが多数扱われるようになりました。 一方で、性に関する事件の報道も多く目にします。故意に相手を傷つける行為はもちろん許されませんが、「そんなはずじゃなかったのに」と自分は悪いと思っていなかったことが、相手を傷つけ、不快にさせてしまうケースも起きています。

 特に職場での「セクハラ」「モラハラ」「パワハラ」などのトラブルは、役職の違いや男女間での差ではなく、日頃の人間関係ととても密接に関わっていると感じます。職場でのコミュニケーション不足や信頼関係の構築不足が影響し、そこに男女の性や考え方に関する知識や理解の不足が加わって、トラブルを招いていくのです。



先の記事でもご紹介している「国際教育セクシュアリティ教育ガイダンス」では、1番目に「人間関係」が記載されており、人間関係を円滑にしていくことが性教育には大切なことだと示しています。 良い人間関係を築いていくには日頃のコミュニケーションがとても大切です。大人になると家族よりも職場の人たちと接する時間が長い方もいるでしょう。職場はスキルアップ、昇進、給与など生活や人生に直結するので、仕事のパフォーマンスを重要視してコミュニケーションは二の次に考えている方もいるでしょうし、事業の成功のためにはチーム力が欠かせないと日頃からコミュケーションを心がけている方もいるかもしれません。

あなたは自分がどちらに当てはまると思いますか?

実際、みなさんはどのように思っているのでしょうか? 社会人男性 (40代)にインタビューをしてみました。

Q.職場で、男女関係なくコミュニケーションは取れていますか?
A.「人が動かないと仕事が回らないので、コミュニケーションは取ろうとするが、仕事上で必要なコミュニケーションだけのこともあります」

Q 会社での「人間関係と性教育」をどう捉えていますか?
A.「日本は性に対してまだまだ閉鎖的なので、ジェンダーレスという言葉が広まってきていても体調が悪そうな女性に対して、「今日生理なの?」と聞くだけでセクハラ発言で簡単に訴えられてしまう。だから体調の異変に気づいても発言しにくいです」

日頃から男女問わずコミュニケーションを心がけているという方でも、一緒に働いているチームのスタッフの体調の異変に気づいても、なんと声をかけていいかわからないと感じてしまうこともあるそうです。 何かを言えば「セクハラ」と捉えられてしまうリスクがあるならば何も言わずにいる方がいいと感じ、結果的に見てみぬフリになってしまったいう経験がある方もいるのではないでしょうか。

例えば「今日、生理なので体調が悪いんです」とか「顔色が悪いけど生理なの?」という会話は女性同士であっても初対面で話す人はほとんどいません。相手の関係性や信頼関係によって発言の受け取り方も変わってきます。また「月経」に対する知識や理解の差によっても受け取り方は変わります。相手が月経についてどのくらい理解があるのかわからずに発言しても、相手を傷つけ不快にさせたり話が噛み合わないといったことがあります。

生理でなくても体調を崩すときもあるし、生理と気づかれたくない人もいるかもしれません。月経は医学的な体の不調がありわかりやすいですが、男性も体調不良や心の疲れはあるでしょう。その変化に気がつけるのか?というと、男女関係なく、日頃から相手の振る舞いや表情などを見ていないと変化に気づくことは難しいと思います。性の知識だけでなく、一緒に働く相手への興味関心や気遣いが大事だと感じます。

一方でコミュニケーションをとって社員同士の距離を縮めていくことは大切ですが、距離感と信頼関係が必要です。信頼関係がある相手であっても、不快と感じたことを我慢する必要も、肯定する必要もありません。自分の体は自分のものなのです。 日本は性教育が遅れているために心や体が不快を表していても、信頼している人ならNOと言ったり思ってはいけないという心理が働き、多くの性被害が起きていると感じます。性の知識を持つことは相手を守ることにも自分を守ることにも繋がります。



また、昨今メディアでは「女性の社会進出推進」を背景に積極的に月経や性教育を取り上げている一方で、会社の中でこの話題を扱うことはタブーのようになっており、メディアと会社の差は大きいといいます。

個よりも集団意識が働くので、個人では知識を得ていてもそれが昇進や会社の利益に繋がらなければ知らないふりをしたり、他の人と同じレベルに合わせようとしてしまう傾向があります。特に日本人は性に興味があっても抑圧されてきたために、知識があることが「経験豊富」のように扱われてしまうこともあります。人とは違う異端児にはなりたくないので「周囲に合わせる」という日本人の協調性がこれまでの性教育にも影響していたように感じます。

Q.管理職をはじめ、社員が平等に知識を持てるようにするにはどうしたら良いと思いますか?
A.「会社全体が月経など男女の性の理解を広めていくにはベネフィットが必要だと思います」

諸外国と比較すると日本は「会社=男社会」であることが多く、また管理職の比率も男性が多数を占めています。よって、正しい人間関係の構築には、男性が性教育を学ぶ機会を作り、正しい知識を持つことが求められると考えます。 しかし、会社全体を変えていくには、会社のベネフィットのためなど「学ぶ理由」がはっきりとして、利益や生産性をもたらしてくれるものでないと、行動のスピードと大きな変化は難しいのかもしれません。

広く平等に性に関する知識を持てるようにするためには「会社のベネフィットが社会のベネフィットになっていく」、そのような仕組みを作っていく必要があるのではないか、と筆者は強く感じています。

2022.07.07UP

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Yurie Atari
助産師。妊活コーチ。妊活をサポートするパーフェクトバースを主宰。幸せな妊娠出産をする女性を増やすことをミッションとする。不妊治療・妊活ポータルサイトの不妊治療相談センターの執筆や監修も行う。